移築再生により生まれた、ユニークな個性のある三棟の蔵の家

K.Matsunaga K.Matsunaga
ホリナンの家, 平野建築設計室 平野建築設計室 Country style house
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日本には古来から、伝統的な様式の建築が数多く作られてきました。住宅はもちろん、城や蔵などといったシンボルになる建築物は、現代でもなお人々を魅了する風情を持っています。都市化が進み、建て替えや取り壊しも進んでしまった現在ですが、残った建築物を保存しようという動きも近年は活発になりました。今回ご紹介するのは、蔵を移築再生し住宅へとリノベーションした物件です。田園風景が残る場所に建つ3棟の蔵の家を平野建築設計室はユニークさを加えながら再生しました。

まるでそこにあったかのような蔵の家

3棟の蔵の家は、もともとこの地にあったものではありません。このうち1棟は築150年の蔵を移築し、まるで昔からそこにあったかのように修復され、再現されています。3棟はそれぞれガラスの屋根で繋がれ、独立したように見えながらも全体をひと棟として使うことができるユニークでオリジナル性のある建物になっています。それぞれが違うカラーの外壁で仕上げがされ、昔の風情ある趣を残しつつ、現代的な雰囲気も感じさせる佇まいです。

高い天井の趣溢れる空間

基本は二階建てですが、一部は蔵の作りを生かし、高い天井と白い漆喰が開放的で心地よい空間が広がります。LDKとして使われるこの空間は、蔵ならではの構造体や内装がとてもよく生きており、現代の建築材料にはない味わいに触れることが可能です。通常の住宅のように大きな窓はないですが、天井付近の窓からは明るい光が差し込み、出入口になる開口部もかなりな大きさがあるため、暗さは全く感じません。暖簾がよく似合う風情はとても落ち着く日本的な良さがあります。蔵をつなぐガラスの通路

蔵をつなぐガラスの通路

外から見ると、まるで3棟の蔵が並んでいるように見えるこの蔵の家は、建物同士がガラスで繋がれています。行き来をしながら外部の天気や気配を感じることができ、インナーテラスのような使い方もできるユニークな空間です。それぞれの外観に特徴のある蔵は、昔ながらの素材が使われていることももちろんですが、コンクリートブロックを馬積みにした現代的な意匠も組み合わせられています。補強や補修をしながら蔵の佇まいを生かし、オリジナル性のある住まいとして変貌を遂げています。

路地のような雰囲気

それぞれの棟同士からガラスの通路を見ると、まるで路地や長屋のような趣を感じる佇まいがあります。ガラスの通路は外部と同じようにあらゆる面から光をもたらします。行き来をする際にも、まるで一度屋外へ出るような感覚を覚え、そこはまるで小さな町のようなコミュニティが生まれています。通常の窓から入る光では再現できない味わいがこの家の魅力をより高め、室内でありながら外の景色を眺めているような独特の空気感は日常がさらに特別なものになるでしょう。

150年の重みを感じる音楽室

3棟のうちのこの棟は、150年前の古材や土塗り壁、建具等が使われ、歴史の重みを感じることができる空間として使われています。ピアノが配置され「音楽室」として使われるこの部屋は北側に位置しています。LDKの明るい棟とは対照的に暗めの雰囲気を取り入れることで、この家全体のメリハリをつけ、それぞれの違った持ち味を存分に楽しめるように計画されました。年月を重ねた素材には、新しいものでは感じられない深みと味わいがあります。この家で棟を行き来しながら暮らすことは、まるで時代を行き来するかのような新感覚の生活が描かれる面白さを生み出しています。

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