土地の様子を読み取り、周囲環境の変化を想定し、そこに佇むであろう住まいを建築家は描いていく。敷地の性格に対するアトリエハコ建築設計事務所/ATELIER HAKO ARCHITECTSの構想から素直に生まれたのがコンクリート打ち放しの硬質感がひと際目立つこの二世帯住宅です。シンプルな佇まいですがそこに至るまでの様々な見地が具現化したコンセプチュアルな家、さっそく見てみましょう。
敷地は間口6m、奥行22mといったいわゆる「鰻の寝床」ですが、南側は駐車場、前面道路向かいは路地状の空き地になっており、開けた空間になっています。また敷地奥は緑道となり、比較的好条件の立地です。ただし南側は隣接する駐車場に将来マンションなど建つ可能性も想定した上で採光・通風・プライバシーを計画しました。
東の道路側ファサードは2層にロッジア式のテラスを設け、プライバシーに配慮しつつ、採光と換気を確保しています。キャンティレバーで地面から浮かせることで軽量感を与えつつも硬質なコンクリートが物質感を強調する佇まいです。リジッドな印象を与えながらも根源的な空間を創造していると言えるでしょう。
西側の緑道に面したファサードはその周囲の特性に応えるようにパーゴラ風の外空間を設け、ルーバーが柔らかく住宅と緑道を仕切ってます。
直線的な造形で構成されるコンクリート打ち放しの建物と有機的な自然の対比がお互いの存在を引き立てる背景になると同時に主役にもなるまたは融和する、そんな関係性が表れています。
コンクリートの面上に切り取られた開口が周囲との対話を生み出し、自然を享受する装置となっています。
建物内部も施主の要望であったコンクリート打ち放しで均一な空間を作りました。階段の立ち上がり壁にガラスブロック、また手摺など随所に金属を採用し、無機質な仕上がりですが、そこで繰り広げられる陽の光りの変化や影、木々の移ろいなどを浮だたせます。
天井までがコンクリート打ち放しです。まるで石窟や石造りの宗教建築のようなプリミティブかつストイックな空間を思い起こします。同時に守られている感覚が呼び起こされるのはそこに建築家が目論んだ「古典」的な雰囲気を感じるからかもしれませんね。
キャンティレバーで宙に浮いた光庭によって周囲環境に左右されることなく採光と換気を確保し、自然を取り込むことができます。
入れ子状の光庭としてのミニマルなテラスはちょっとした屋外生活にも対応できるほどの広さがあるので、テーブルを置いてくつろぐこともできそうですね。光庭を通して延びる視線や階段の位置のバリエーションによって豊かな動線が生まれ、二世帯住宅ということで家族の間における距離感や緊張を生み出していると言えそうですね。
建物の幅は3.6mと決して広くはありませんが、吹き抜けや天窓からの採光によって開放感が感じられます。暖かい季節にはルーバーを通して緑道の木々が様々な表情を見せてくれるのでしょうか。
仕上の美しいコンクリートにほとんど存在感のない階段が溶け合うようなミニマルなデザインです。マテリアルと光が生み出す陰影が空間に小宇宙を作り出し、無駄なものを排除しようとする意志のようなものが伝わってきます。
生活感を限りなく削ったデザインの キッチンです。引き戸を閉めるとそこは東西に延びる長い廊下だけが存在します。静寂の広がる空間が物事の本質を問いただす機会を与えてくれるような住宅ではないでしょうか。
こちらの居室は床仕上に異素材を使い表情に変化をもたらしています。モノトーンの造作家具でまとめ、打ち放しのコンクリートとの調和を図っています。空間の伸縮を作ることで光の感じ方、音の響きなどが体感できる感覚に訴える根源的な空間で構成される二世帯住宅です。
【二世帯住宅については、こちらの記事でも紹介しています】
※二世帯住宅も住まいのかたちは様々。完全同居・部分共用・完全分離型のメリット・デメリットまとめ
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