創造的で詩的なalcarolの世界

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Fisheye, Alcarol Alcarol Living room
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イタリア北東部の都市ベッルーナに拠点を置くalcarolはAndrea FortiとEleonora Dal Farraによるユニットだ。alcarolはデザインスタジオでありクリエイティブなファクトリーでありワークショップスペースとショールームも兼ね備えている。お互いの情熱と深いポエティックな世界観を創造的な技法で交わらせ、作り出される彼らのプロダクト。その中から今回は二点紹介したい。

【Dolomyth】太古の海を閉じ込めて

このプロダクトの名称は彼らの地元イタリア北東部の山地でアルプス山脈の一部であるDolomitesから取られた。Dolomitesのダイナミックでユニークな景観は、地層の進化と変化が活発だった中新世の時代(2300万年前〜500万年前)に海の底だった部分が隆起してできたもので、現在は山脈でありながら海洋物が多く発掘されている場所だ。

素材は地元の採石場から放棄されていたものを頂いてきた。岩石の表面はところどころ苔と苔に似た菌類(地衣類)に覆われ、縦に切断された断面はグレーからピンクへと美しいグラデーションを描いている。この土地でいかに地層が堆積してきたのかが一目ではっきりと分かる

水に似た樹脂により成形されたそれは、太古の海だった時代を瞬間凍結させたようだ。

地球の歴史とも言えるこの地層を含む岩石が途方も無い年月を経て、今我々の手の中にある… 。今夜は太古のロマンに夢を馳せながら静かにひと時を過ごしたい、そんな気分にさせてくれるサイドテーブルだ。

【Fisheye】最後の時を永遠に

こちらのプロダクトは、ヴェネツィアの運河のポールとして風化の数十年を耐えてきた歴史を持つ木材の美的価値を再発見・利用することを目的に作成された。海水域に生息するTeredo Navalisという虫によって深く侵蝕されていたこの木材。それは芸術的なアートワークでありその崩壊しそうに侵蝕された外側と、運河で何十年も耐えてきた内側の堅牢性とのギャップにalcarolは美を見出した。

まず樹脂で木に空いた穴をきれいに埋め全体を成形した後、元の外観や素材の条件に適した箇所に気泡を注入する。… すると枯れかけながら今もまだヴェネツィアの運河の水に佇んでいるような、少しメランコリックで侘び寂びも感じられるテーブルとして命を吹き返した。

モノの本当の価値を見いだす為の創造的活動

廃棄処分される寸前のものの時間を一瞬に閉じ込めて、新しい命を与える。詩的でロマンティックな彼らのプロダクトだが、それらは裏打ちされた技術があってこそ表現できるのだ。

alcarolによるプロジェクトは、勇敢かつ型破りな創造的プロセスを経て、オブジェクトや材料の本当の価値を生成するための活動でもあり、その結果生まれたプロダクトは機能的で魅力的なものとなる。また彼らは、現代の均一化された工業デザイン技術と、地元に古くから伝わる堅実的でありながらユニークなハンドクラフト技術という対照的な二つの境界線を飛び越え、それらを融合させるようなプロジェクトも開発している。今後も注目したいユニットだ。  

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